ポリビニルアルコール(PVOH・PVA)とは?構造・特徴・用途・選び方を解説
ポリビニルアルコールは、PVOH又はPVAとも呼ばれる合成樹脂です。なお、日本ではポバールの名称が用いられることもあります。水に溶ける数少ない合成樹脂のひとつで、接着剤や紙の加工、包装フィルムなど幅広い分野で使われています。この記事では、ポリビニルアルコール(PVOH,PVA)の概要や歴史、特徴などを解説します。構造式や製造方法、性質を左右するケン化度・重合度についても取り上げます。また、具体的な使用例やおすすめ製品についても取り上げているため、ぜひ参考にしてください。
ポリビニルアルコール(PVOH,PVA)とは
ここではポリビニルアルコールがどのようなものなのか、どのような経緯で作られたのかといった点を解説します。まずは基本的なポイントを押さえておきましょう。
ポリビニルアルコール(PVOH,PVA)の概要
ポリビニルアルコールは、PVOH又はPVAとも呼ばれる合成樹脂です。なお、日本ではポバールの名称が用いられることもあります。ポリビニルアルコール(PVOH,PVA)は、酢酸ビニルを重合することで得られるポリ酢酸ビニルをさらにケン化することにより得られるものです。
分子量(重合度)とは、ポリマーの長さを表します。またPVOH・PVAは、水酸基と酢酸基を持っており、その合計に対する水酸基の割合のことをケン化度と言います。分子量(重合度)やケン化度の異なる様々な製品があります。
身近なところでは、洗濯のりや液体のりの主成分としても使われています。一方で工業分野では、接着剤、紙の表面加工、乳化剤、包装フィルムのコーティングなど、さまざまな製品の性能を支える素材として利用されています。
ポリビニルアルコール(PVOH,PVA)の構造式・化学式
ポリビニルアルコールは、炭素の主鎖に水酸基(-OH)が規則的に並んだ構造をしています。構造式と化学式は次のとおりです。
構造式:-[CH2-CH(OH)]n- 化学式:(C2H4O)n

分子の中に水酸基を多く持つことが、水に溶ける性質や、紙・木材などへの接着性、ガスを通しにくい性質の理由になっています。
なお、名前のもとになっている「ビニルアルコール」は、単体では不安定で存在できない物質です。そのため、ポリビニルアルコールはビニルアルコールを直接重合するのではなく、酢酸ビニルを重合してからケン化するという方法でつくられます。
ポリビニルアルコール(PVOH,PVA)の歴史
ポリビニルアルコール(PVOH,PVA)は、1924年にドイツのヘルマン(W.0.Herrmann)とハーネル(W.Harnel)がポリビニルアルコール(PVOH,PVA)を発見したことが始まりです。
日本では日本合成化学工業が1950年からポリビニルアルコール(PVOH,PVA)を生産し、幅広い用途で活用されたことから普及しています。現在日本合成化学工業は三菱ケミカルに吸収合併され、日本合成化学工業のポリビニルアルコール(PVOH,PVA)を三菱ケミカルが製造販売しています。
ポリビニルアルコール(PVOH,PVA)の製造方法
ポリビニルアルコールは、大きく「重合」と「ケン化」の2つの工程を経てつくられます。「重合」の工程では、原料の酢酸ビニルを重合させてポリ酢酸ビニルをつくります。「ケン化」の工程では、ポリ酢酸ビニルが持つ酢酸基を水酸基に置き換えることで、ポリビニルアルコールが得られます。
重合工程:酢酸ビニルからポリ酢酸ビニルをつくる
原料の酢酸ビニルを重合し、ポリ酢酸ビニルをつくります。この工程で、分子がどれだけ長くつながるか(重合度)がおおむね決まります。重合度は、水溶液にしたときの粘度や、被膜の強さなどに影響します。
ケン化工程:酢酸基を水酸基に置き換える
次に、ポリ酢酸ビニルが持つ酢酸基を、アルカリなどを用いて水酸基に置き換えます。この反応をケン化といいます。すべての酢酸基を置き換えるのではなく、どの程度置き換えるか(ケン化度)を調整することで、水への溶けやすさや界面活性能など、性質の異なるポリビニルアルコールをつくり分けています。
性質を決める2つの指標:ケン化度と重合度
ポリビニルアルコールの性質は、主に「ケン化度」と「重合度」の組み合わせで決まります。用途に合った製品を選ぶうえで、最も重要なポイントです。
ケン化度による違い(完全ケン化型・部分ケン化型)
ケン化度が高いものを「完全ケン化型」、ケン化度をあえて低く抑えたものを「部分ケン化型」と呼びます。
| 完全ケン化型 | 部分ケン化型 | |
|---|---|---|
| ケン化度の目安 | 約 98mol%以上 | 約 86〜90mol% |
| 水への溶けやすさ | 冷水には溶けにくく、加熱して溶かす | 冷水でも溶けやすい |
| 耐水性 | 高い | 低い |
| 界面活性能 | 小さい | 大きい(保護コロイド剤に適する) |
| 主な用途 | 接着剤・バインダー、紙加工、フィルムなど | 乳化剤、懸濁剤、分散剤など |
重合度(分子量)による違い
| 重合度が低い | 重合度が高い | |
|---|---|---|
| 水溶液の粘度 | 低い | 高い |
| 被膜・接着の強さ | 比較的弱い | 強い |
| 扱いやすさ | 高濃度でも塗工しやすい | 少量でも粘度や強度を出しやすい |
重合度が高いほど分子が長くなり、水溶液の粘度が高く、被膜や接着の強さが増す傾向があります。反対に重合度が低いものは、粘度が低く、高濃度の水溶液にしても扱いやすいという特長があります。
変性ポリビニルアルコールとは
ケン化度や重合度の調整だけでは得られない機能を持たせるため、分子の中に特定の官能基(変性基)を導入したものを「変性ポリビニルアルコール」と呼びます。変性基の種類によって、分散性や架橋性、溶融成形性などの機能を付与できます。三菱ケミカルでは、ゴーセネックス™、ニチゴーGポリマー™として展開しています。
変性ポリビニルアルコールの種類や製品ごとの特徴は、以下の記事で詳しく解説しています。
特殊変性ポリビニルアルコールの種類・特徴・用途をご紹介!
ポリビニルアルコール(PVOH,PVA)の6つの特徴
ポリビニルアルコール(PVOH,PVA)にはいくつかの特徴があります。ここでは具体的な6つの特徴を紹介します。
①水溶性
PVOH・PVAは水に溶ける樹脂です。加熱によってより溶けやすくなります。ただし、ほとんどの有機溶剤には溶解しません。
溶けやすさはケン化度によって異なり、部分ケン化型は冷水でも溶けやすい一方、完全ケン化型は加熱しながら溶かす必要があります。一般的には、ダマにならないよう冷水にかき混ぜながら分散させたあと、撹拌を続けながら加熱して溶解させます。
水溶性に関する特性については以下もご覧ください。
水溶性 – ゴーセノール™の特性
水溶性 – ニチゴーGポリマー™ の特性
水溶液特性 – ニチゴーGポリマー™ の特性
②接着性
ポリビニルアルコール(PVOH,PVA)は、木材、紙、布などの親水性の素材に対して優れた接着性を示します。接着力が強く、安全で使いやすいのが特徴です。
接着性の特徴について詳細はこちら
③界面活性能
部分ケン化型のポリビニルアルコール(PVOH,PVA)は優れた界面活性能を有しており、保護コロイド剤として利用できます。
界面活性能の特徴について詳細はこちら
④被膜形成性
ポリビニルアルコール(PVOH,PVA)は、被膜形成性が優れており、強靭でしなやかな被膜を形成します。
被膜形成性の特徴について詳細はこちら
⑤ガスバリア性
ポリビニルアルコールの被膜は、乾燥した状態では酸素などのガスを通しにくいという特長があります。この性質を活かし、食品包装などのフィルムにコーティングして、内容物の酸化や劣化を防ぐ用途に使われています。なお、湿度が高い環境ではガスバリア性が低下するため、用途に応じて他の素材と組み合わせて使われます。
ガスバリア性に関する特性については以下もご覧ください。
ガスバリア性 – ニチゴーGポリマー™ の特性
ガスバリア性 – ゴーセノール™の特性
⑥耐油性・耐溶剤性
ほとんどの有機溶剤に溶けず、油も通しにくい性質を持っています。紙の表面に塗工することで、油がしみ込みにくい耐油紙をつくることができます。耐溶剤性の特徴について詳細はこちら
ポリビニルアルコール(PVOH,PVA)の使用例
ここまでに紹介したような特徴から、ポリビニルアルコール(PVOH,PVA)は多岐にわたって利用されています。実際にどのように利用されているのか、使用例をご紹介します。
主な用途と、それぞれで活かされている特徴は次のとおりです。
| 用途 | 主な使われ方 | 活かされる特徴 | 主な製品 |
|---|---|---|---|
| 接着剤・バインダー | 合板用接着剤、再湿糊、セラミックのバインダー | 接着性、被膜形成性 | ゴーセノール™ |
| 紙加工剤 | 表面コート剤、感熱紙 | 被膜形成性、耐油性 | ゴーセノール™、ゴーセネックス™ |
| 乳化剤 | 酢酸ビニル樹脂エマルションなど | 界面活性能 | ゴーセノール™、ゴーセネックス™ |
| 懸濁剤 | ポリ塩化ビニル樹脂の重合 | 界面活性能 | ゴーセノール™、ゴーセネックス™ |
| フィルム・包材 | ガスバリアコーティング、水溶性フィルム、溶融成形 | ガスバリア性、水溶性 | ゴーセノール™、ニチゴーGポリマー™ |
接着剤・バインダー
合板用の接着剤や再湿糊、切手の裏のりなどにも使用されています。また、セラミック製造などの無機物のバインダーとしても活用されています。バインダーには自重程度では変形しない「保形性」と、大きな外力だと変形する「流動性」の2つの特性を持つことが求められます。
接着剤・バインダーの使用用途について詳細はこちら
紙加工剤
洋紙、板紙や特殊紙などの表面コート剤などに使用されています。ポリビニルアルコール(PVOH,PVA)を塗工することで印刷適性や耐油性、強度の向上が期待できます。また、感熱紙では、発色に使われる材料を分散させたり、塗工層を支えたりする役割も担っています。
紙加工剤の使用用途について詳細はこちら
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顕色剤の分散材やバインダーに使用されるPVOHの特性
乳化剤
木工用ボンドの主成分であるポリ酢酸ビニルエマルションの乳化剤として活用されています。エマルションとは「水の中に油が分散、または油の中に水が分散している状態」のことです。
乳化剤の使用用途について詳細はこちら
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酢酸ビニル樹脂エマルジョンとして接着剤に使用されるポリビニルアルコールのご紹介
懸濁剤
ポリ塩化ビニル樹脂製造時の重合用懸濁剤として使用されています。塩化ビニルモノマーを攪拌と分散剤によって水に懸濁し、数時間重合することで粒子径50~200μのポリ塩化ビニル(PVC)を製造しています。
懸濁剤の使用用途について詳細はこちら
フィルム・包材
PVOHの水溶液を基材にコーティングすることで、バリアフィルムに高いガスバリア性を付与できます。また、水に溶ける性質を活かして、洗剤や農薬の個包装などに使われる水溶性フィルムや、液晶ディスプレイに使われる偏光フィルムの原料にもなっています。さらに、溶融成形が可能な変性品を使えば、押出成形などでガスバリア性の高い包材をつくることもできます。
フィルムの使用用途について詳細はこちら
溶融成形・生分解性の包材については以下もご覧ください。
ガスバリア包材(溶融成形) – 使用用途
堆肥化可能なバリア包材 – 使用用途
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その他の用途
用途に合ったポリビニルアルコール(PVOH,PVA)の選び方
ポリビニルアルコールは、同じ名前でもケン化度・重合度・変性の有無によって性質が大きく異なります。グレードを選ぶ際は、次の3つのステップで考えるとスムーズです。
ステップ1
求める機能を明確にする(接着力、乳化・分散の安定性、耐水性、ガスバリア性など)
ステップ2
ケン化度・重合度の目安を決める(例:接着力や耐水性を重視するなら完全ケン化型、乳化・分散なら部分ケン化型)
ステップ3
一般品で足りない機能は、変性品を検討する
| 目的 | 推奨されるタイプ | 該当製品 |
|---|---|---|
| 接着力・被膜の強さを高めたい | 完全ケン化型・重合度が高め | ゴーセノール™ |
| 乳化・分散を安定させたい | 部分ケン化型 | |
| 耐水性を持たせたい(架橋したい) | 変性品(カルボキシル基変性など) | ゴーセネックス™ T |
| ポリ塩化ビニルの懸濁重合に使いたい | 部分ケン化型・変性品 | |
| 繊維などに吸着させたい | 変性品(カチオン性) | ゴーセネックス™ K |
| 溶融成形・ガスバリア包材に使いたい | 変性品(1,2-エタンジオール基変性) | ニチゴーGポリマー™ |
グレード選定のご相談・サンプル請求は以下からお問い合わせください。
ご相談・サンプル請求
三菱ケミカルが提供するポリビニルアルコール(PVOH,PVA)のご紹介
三菱ケミカルではポリビニルアルコール(PVOH,PVA)を一般銘柄であるゴーセノール™の商標名で販売しています。また、特殊変性ポリビニルアルコールとしてゴーセネックス™、ニチゴーGポリマー™を展開しています。
ゴーセネックス™、ニチゴーGポリマー™は、変性基を導入していることで、一般のポリビニルアルコール(PVOH,PVA)にはない機能を発揮することができます。ゴーセネックス™️はグレードにより架橋性や分散性など異なる優位性を持っています。ニチゴーGポリマー™は、優れたガスバリア性と水溶性を有する溶融成形可能な生分解性のビニルアルコール系樹脂となっています。さらに、各国の生分解性認証を取得しており、各国の食品衛生法にも対応しています。
ゴーセネックス™(特殊変性品)
変性基の導入により、架橋性や分散性などの機能を持たせた特殊変性ポリビニルアルコールです。変性基の種類によって複数のシリーズがあり、用途に合わせてお選びいただけます。
ゴーセネックス™の詳細は以下をご覧ください。
ゴーセネックス™ 製品ページ
ゴーセネックス™ カタログ請求
ゴーセノール™(一般銘柄)
ケン化度・重合度の異なる幅広いグレードをそろえた、三菱ケミカルのポリビニルアルコールの一般銘柄です。接着剤・バインダー、紙加工、乳化剤、懸濁剤など、さまざまな用途でご使用いただけます。
ゴーセノール™の詳細は以下をご覧ください。
ゴーセノール™ 製品ページ
ゴーセノール™ カタログ請求
ニチゴーGポリマー™(特殊変性品)
優れたガスバリア性と水溶性を持ち、溶融成形が可能な生分解性のビニルアルコール系樹脂です。食品包装やコーティング剤などに活用されています。
ニチゴーGポリマー™の詳細は以下をご覧ください。
ニチゴーGポリマー™ 製品ページ
ニチゴーGポリマー™ カタログ請求(無料)
三菱ケミカルでは、一般銘柄のゴーセノール™をはじめ、特殊変性品のゴーセネックス™、ニチゴーGポリマー™をご用意しています。用途に合ったグレードのご相談やサンプルのご請求は、お気軽にお問い合わせください。
ご相談・サンプル請求、製品カタログのダウンロードは以下からどうぞ。
ご相談・サンプル請求
製品カタログ
ポリビニルアルコール(PVOH,PVA)に関するよくある質問
ポリビニルアルコール(PVA)は何に使われていますか?
接着剤やバインダー、紙の表面加工剤、乳化剤、ポリ塩化ビニル製造時の懸濁剤、包装用フィルムのコーティングなどに使われています。身近なところでは、洗濯のりや液体のりにも使われています。
PVAとPVC(ポリ塩化ビニル)の違いは何ですか?
PVAはポリビニルアルコール、PVCはポリ塩化ビニルの略称で、別の樹脂です。PVAは水に溶ける性質を持つのに対し、PVCは水に溶けず、配管や建材、電線の被覆などに使われます。なお、PVCを製造する工程では、PVAが懸濁剤として使われています。
ポリビニルアルコールとポリ酢酸ビニルの違いは何ですか?
ポリ酢酸ビニルはポリビニルアルコールの原料にあたる樹脂で、ポリ酢酸ビニルをケン化するとポリビニルアルコールになります。ポリビニルアルコールは水に溶けますが、ポリ酢酸ビニルは水に溶けません。
ポリビニルアルコールは安全ですか?
ポリビニルアルコールは、洗濯のりや液体のりなどの日用品にも使われている素材です。ただし、使用できる用途や必要な規格は分野ごとに異なるため、具体的な用途での使用可否については、お問い合わせください。
ポリビニルアルコールを水に溶かすにはどうすればよいですか?
冷水にかき混ぜながら少しずつ加えて分散させたあと、撹拌を続けながら加熱して溶かすのが一般的です。適した温度や時間はケン化度などによって異なるため、各グレードの技術資料をご確認ください。
用途に合ったグレードはどのように選べばよいですか?
求める機能に応じて、ケン化度・重合度・変性の有無を選ぶのが基本です。本記事の「用途に合ったポリビニルアルコール(PVOH,PVA)の選び方」を参考にしていただくか、お気軽にご相談ください。



